私は、煙ときつめの香水から逃れるように店を出て行ったのだった。すぐキャブを止め乗り込みホテルに着いたのは深夜2時を過ぎていた。朝はあれほどせわしなく人が行き来しているロビーも今は靴音も聞こえるほど静かだ。フロントには、トニーがいた。「お帰りなさいませ」「今日は遅番かい?」「ホントは違うけど、あいつが今日どうしてもって」「甘いなあトニー」トニーの彼女はここから2ブロック先にあるジャズクラブのバイトで...
シューからブログを頼まれて、何を書こうかと思いながらいつものバーに来た。店に入ると、マスターのデュークは、その大きな背中を器用にねじり軽く頭を下げた。席に座り、濃い目のバーボンが注がれたロックを口に運びながら、たわいない話をデュークとしていると、甘い香水が不意に近づいて来た。女だ。「ねえ、火貸してくれない」細長い煙草を器用に扱いながらそう話す女にライターの火を近づけると、薄暗いバーにぱっと女の顔が...